愛猫ぷうのいないロンドンなんて、つまらない。

ディヴィッド・ボウイ一周忌に、映画『地球に落ちてきた男』を鑑賞

デイヴィッド・ボウイが星に帰って、はや一年。
それを祝うように、ボウイ主演の映画『地球に落ちて来た男』(1976)を初めて観ました。
私の人生において、初ボウイ体験は80年代でした。
異邦人というか宇宙人的というかアンドロギュヌスというか華やかな時代は終わっていて、おっさんになりきれないアヤシい存在として私の目には映りました。
それで、ボウイが一番輝いていた時代の映画にエイリアンを演じたというわけですから、それは楽しみ楽しみ。
だったんだけど、あれ?


ウィキ掲載のあらすじは以下の通り。
『ある日、宇宙船がアメリカ・ニューメキシコの砂漠地帯に落下する。
しばらくして後、トーマス(トミー)という非常に美しい容姿を持った1人の男が弁護士のもとを訪れ、人知を超えた9つの特許を元に巨大企業を作り上げる。
実は彼は落下した宇宙船に乗っていた宇宙人で、地球にやってきたのは、不毛の地となりつつある母星を救うという目的のためだった。しかし、そのビジネスの成功はやがて思わぬ結果を招く…。』


ハダカのシーンが多過ぎて、それが無意味過ぎて、単に観客に媚うってるだけじゃないのと面倒くさくなって、想像していたより世俗的過ぎて、なーんだボウイさんが出演しているだけの単なるB級映画じゃないのかと思ったら。
違った。


この先、ネタバレいきます。













勿論、ボウイ演じる、イギリス英語を喋る科学者トミーの言うことを信じて、旱魃で苦しむ故郷の星に残した妻と子供達のために地球にやってきて、水を持ち帰り故郷を救うという高潔なプランを持ったエイリアンが、地球人の女性と不倫関係に陥ってそれを金で解決しようとしたり、人体実験されたりして、酒に溺れていくという身もふたもないストーリーとして観ることもできます。

しかし、それにしては、いろいろ疑問が。
結局、これは英国から来た天才科学者の妄想なのではないか、という捉え方もできます。
英国のパスポート持っているし(最初のシーンで、質屋で見せている)、エイリアンであるという徹底的な物証はなく、地球に着地して破損して使えないなるよう宇宙船で他の惑星に行って旱魃の故郷を救うという考え方が、意味不明。
実はトミーの『不倫』相手、メリールーとの痴話げんかが『真実』を暗示しているのでは。
メリールーは、トミーに惚れ込んでいるので彼の言うことを一応は信じている、でも、たまに彼にとっては痛いところをついてきます。
彼の英国のパスポートが期限切れとか、故郷から何光年かかるのとか、『エイリアン』と罵ったり。
英語のalianは、宇宙人とだけでなく、外国人という意味もありますから。
メリールーは、トミーが宇宙人だという話を信じているフリをして、内心は彼が心の病気をもっていることを察していたのかも知れません。

物語の後半で、トミーはヘンな場所に監禁されます。
そして、人体実験されるのですが、ある日、唐突にトミーはドアが開いていることに気がついて、逃げ出します。
そこで観客が知るのは、この監禁場所は普通のホテルであったこと。
地下施設でも、人里離れた研究所でもなく、『オールドボーイ』のように窓のない閉鎖された空間に閉じ込められたのではなく、いつでも自由に移動ができる場所だったということ。
そういえば、ボーイの姿が映っていたし、メリールーは何の障害もなく楽々とトミーに会いにきたし、そのとき「ルームサービス」という単語が彼の口から出たし、彼のいる場所はホテルとは思えない幾つかのまったく違ったコンセプトの部屋の一番奥にあり、外界と結ばれているであろうドアのあるところは舞台かテレビのセットの裏側のような作り。
つまり、監禁されていたのではなく、トミーは本人の意思で(敵対するカンパニーから身を隠して)、或は鬱かなにかの心の病で(プロジェクトが邪魔されて失敗に終わったから)、ホテルに閉じこもっていただけで、人体実験も妄想であり、医者や看護婦は彼の往診にきただけではないのでしょうか。
つまり、映画の殆どのシーンは、トミーの妄想の映像化ではなかったのかということ。
しかし、最後のほうでは、他の地球人の登場人物は年をとっていくのに、トミーだけは全く変わらないのです。
それは、トミーが宇宙人だから加齢の速度が違うのではなく、彼の妄想の世界では、彼だけが老化しないのかも知れません。


では、何故ここまでトミーはここまで詳細な『妄想』をもつようになったのか。
勿論、総合失調症を抱えた天才科学者、という見方もできます。
でも、私はトミーはアルコール中毒で、それを克服する物語だったのではないかと思いました。
映画の最初から最後まで、執拗に登場するのは、無色で透明な液体。
最初の頃は、トミーは水を飲んでいます。
私の観た限り、最低2回、その水に何か白い粉を入れています。
これは、アルコールを絶つための何かしらのお薬だったのではないでしょうか。
トミーには、母星ではなく、母国である英国に妻も子供もいて、アルコール中毒のために家庭を壊してしまい、アメリカで科学者として一からやり直そうとして、新しいアイデンティティーの創造のために築き上げたのが『故郷を守るために地球にやってきた家族思いの科学者』。
最初のシーンで妻の指輪を質屋に売るというのは、過去と訣別する儀式だったとも思えます。
母星で起こったという旱魃は、アルコールを断っているためにおこるアルコールへの渇きのメタファーではないでしょうか。
中盤からはトミーが水を飲むシーンはなくなります。
それでも、飲んでいるのは多くが無色で透明の液体。
特に好んで飲んでいるのは、ジン。
ビーフィーターという英国の会社のジンが特にお気に入りのようでした。
ジンは、無色透明なスピリッツですから、端から見ると水のようにも見えるのです。


勿論、トミーが天才科学者であるということも妄想だという見方もできますが、ここだけは信じます。
だって、デイヴィッド・ボウイが最後に出演した映画は2006年の『プレステージ』で、演じたのはオーストリア帝国出身の謎めいた天才科学者のニコラ・テスラだったから。
ボウイの最初の映画も最後の映画も、外国から来た天才科学者の役。
なんだか、いいじゃない。


ボウイ演じるトミーは宇宙人で不運が続いて故郷に帰れなかった、というストーリーの映画として観ても、ボウイさんの細くて青白くて華奢な裸体をただただ拝む映画としても、それなりに楽しめると思います。
ただ、私個人としては、アル中治療中の英国人がアメリカで堕ちていく映画として捉えたとき、B級映画的な表現に納得し一番面白いと感じました。



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コメント
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2017/01/12(木) 22:50 | | #[ 編集]
No title
わたしは未見ですv-393

戦メリしか見たことないですv-472

カンチャナブリへ行くたびに強烈に思い出しますv-466
2017/01/13(金) 07:29 | URL | ゲンタくんのパパ #-[ 編集]
ゲンタくんのパパさん
初ボウイ体験が、戦メリでした。
今考えてもすごーいキャスト。
監督としてよりも、テレビでおちゃらけていた大島渚監督をつい思い出してしまいますv-421
2017/01/13(金) 08:57 | URL | ぷうまま #-[ 編集]
No title
こんばんは!

デビットボウイ、あれから一年ねんですね。
去年はミュージシャンが随分亡くなったような気もしてます。
私はラビリンスの王様、
声が素敵だと思いました。

今、また千葉から戻りました。千葉神社、、妙見を拝みに、、月星の。
お天気もいいし、急に行くことになりました。
かえりは藤沢修平展。日本的なセリフが並んでました。

腰の周りにお肉がついてるのがわカル、ショックだけど、
何とか歩けてるのが嬉しいです。
一寸腰湯につからないと、、ww
2017/01/13(金) 17:19 | URL | hippopon #-[ 編集]
hippoponさん
以前はミュージシャンが多角的にいろいろなことをやって、アート/文化/ポップカルチャー/若者の価値観、全部ひっくるめて影響していたんですよね。
すごいですよね。
最近は、そんなふうにはもういかないよ〜。

神社へのお参り、うらやましいです。
なんだか外国にいると「清め給え〜」と感じてしまう。

私、お腹とか腰とか背中に、つきましたよ〜、肉。
落ちにくくて、ダイエットしてもすぐ戻っちゃう。
2017/01/14(土) 09:49 | URL | ぷうまま #-[ 編集]
No title
ぴったりとしたワンピースかいました、
お腹の線がすごくいやらしく出てて、、時折それきて、
戒めるつもり。
高かった、、貧乏人なのに、、だから頑張ってもどすの。ww
切ない作戦。
2017/01/14(土) 20:08 | URL | hippopon #-[ 編集]
hippoponさん
ワンピースが着られるなんて羨ましいっ。
私は、履けなくなったりキツくなった服をたまに来て、戒めています。
でも、だからといって、痩せるモチベが上がるわけではない。
う〜ん。
2017/01/15(日) 22:01 | URL | ぷうまま #-[ 編集]
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Author:ぷうまま
愛猫ぷう、17歳の2016年7月、英国のEU離脱の衝撃が冷めないときに旅に出てしまいました。ぷうのいないロンドンで、なんとか適当にぐーたらに生きていけるように、ちょっとはがんばらなくちゃなぁ。

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