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高齢化社会、英国でも問題

20年くらい前に、『風が吹くとき』(When the Wind Blows、1986年製作)という映画を観ました。
イギリスの作家でイラストレーターのレイモンド・ブリッグズが1982年に発表したグラ­フィックノベルをもとにしたアニメーション映画です。レイモンド・ブリッグズといえば『スノーマン』で有名ですが、この『風が吹くとき』は社会派の大人向きの作品です。


ちなみに、主題歌はデヴィッド・ボウイ、音楽はピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズという豪華な顔ぶれ。


物語の中心は、田舎に住む仲の良い初老の夫婦。
世界情勢は悪化してゆき、とうとう核ミサイルが使われてしまう。
夫婦はシェルターに隠れて命は助かったものの、徐々に放射能の脅威に冒されていく。
それでも夫婦は、国が助けてくれることを信じてお互いをはげましあう。


そんなあらすじだったと思います。
とにかく、見終わった後ショックで感想を声にして表現できないほどでした。
冷戦のころはこういった核戦争をテーマにした映画や漫画(北斗の拳もそうですね!)や小説が山ほどありましたが、私の記憶の中では『風が吹くとき』のインパクトはかなりのものでした。
2度と観ない、と思ったほど。
あまりにトラウマになるので、無意識に忘れようとしたほどに。


それは、多分、この夫婦があまりにも無垢で純粋で素直で、悲しいほどに前向きでポジティブだったから。
国に対する絶対の信頼と依存。絶望的な状況のなかでも。
人間の無知が、実は怖ろしいということに気付かされたから。









南米出身の女性に「日本では英国のように高齢者に対する福祉や社会サービスとかあるのか」と聞かれました。
ふつうの国ならある程度のサービスはあると思ったのですが、なんと彼女の祖国ではそういった基本的なサービスも無いとのこと。
英国も日本も、最低限のサービスはなんとか受けられる(建前はそうです)ということは有難いことなのだとあらためて気付かされました。


ただ、「日本人は高齢者社会を英国人よりも意識していて、いろいろ準備したり医療や介護にお金がかかったり受給年金が減ることを覚悟している」と言いました。
英国では、まだまだ高齢化社会になると社会全体がいろいろ負担しなくてはならない、という覚悟が欠けるためか、最近は年金問題でストライキがよく起こります。
「仕方ない」と、私は考えてしまうのです。
私達は、医療に頼りながら介護を受けて長く生きるようになったのですから。


英国の場合、NHSという無料の国民保健サービスがあります。
これは医療のみの無料サービスを意味します。社会的サービスあるいは介護は有料です。貯金や不動産(持ち家も含む)などある程度所有する場合、その価値によっては本人負担となります。(英国では国による介護保険制度は、私の知る限りありません。)


インテリや収入のかなりある中産階級はそうでもないのですが、時々一般の英国人と接するとまだまだ国の福祉制度を信頼して、福祉や介護サービスも無料で受けられると思っている人がいます。英国で高齢者と接した経験がちょっとありますが、サービスを期待しても結局受けられなくて落胆する様子をみたことがあります。


彼らが『風が吹くとき』の夫婦になんとなく重なるのです。
信じている。
国がなんとかしてくれる、と。


おおむね日本人は、いつ地震や噴火や台風や津波が来るか分からないので、いろいろ「準備」してると思うのです。高齢化社会についても。
心の準備も含めて。
もちろんまだまだ準備足りないでしょうが、英国に比べるとかなり問題に対して取り組んでいるようにみえます。


手厚かった(過去形で書かざるをえない)英国の福祉制度。
これから、どうなるのでしょうか。


Secretary of State for Health(健康大臣、といったところ?)のジェレミー・ハント氏が「英国は高齢者を面倒みるアジアの文化を取り入れるべきだ」と、発言。
「アジアでは一人で生活することが困難になった場合、ケアホームは最終手段だ」と。
英国では、一般的に家族は一緒に暮らそうとせず、ケアホームに送ります。
(もちろん、日本だって家族の事情や病状によっては選択はケアホーム)


家族がいても、残念ながら疎遠な関係が多いんですよね英国の場合。
(日本でも介護とかを巡って家族がけんかになるとか。どこも結局問題だらけ?)
ハント氏、実は東洋大好き大臣。奥さんは中国人で若い時は二年間日本で英語教師をしていたそうで、日本語は流暢に話せるとか。
認知症の研究や治療、介護にも力をいれ、日本の介護施設の視察もしたハント氏。
高齢者の孤立や孤独といった問題にも積極的に取り組んでいます。
ハント氏の発言の裏に「国は借金だらけだし高齢者社会が進んで国が面倒みきれなくなることに、気付いてくれよ」というメッセージがあると思っているのは、私くらいでしょうか。


ネット版The Guardianの記事より
Jeremy Hunt: UK should adopt Asian culture of caring for the elderly






日本人のママと一緒にいても日本語は全く話せないぷう。
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コメント

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長生きは高くつく

大変興味深く読ませていただきました。

日本では40歳を過ぎると介護保険料を国に払い始めます。

政府はそれで予算を確保したようですが、この介護保険の使い道が合理的かどうかは疑問があります。

実際、親の介護をしている知人が言うには、時々訪れる施設では余計なサービスを使わせようとする傾向があり、それが結構高かったりするようです。
そして、後日その何倍かのお金が、国から施設に支払われるのでしょう。

通行料のように金を人から取り上げて、お金を回しているだけだと知人は嘆いておりますが、子供が親の面倒をすべて見るのは難しいのも確かです。

少子高齢化が進んでいる今では、介護に関しても将来はさらに厳しいものになるのでしょう。

近年ではアジア諸国から人材を確保しようとしていますが、日本語とその資格取得の難しさが壁となっているようです。

長生きは高くつく。ということでしょうか。

Re: 長生きは高くつく

余計なサービスを使わせようとするというのは、ちょっと問題ですよね。
その一方で、もっと介護が必要な方もいることでしょう。
どこでも高齢化社会は、問題が山積ですね。
英国は、移民増加に伴った急な出生率増加で、学校不足が深刻になるとか(教育も金かかりますからね)。
高齢化社会と予測外の高出生率の同時発生です。
どうやってこの危機を乗り越えるか。
英国がんばれ〜。

No title

残業おわり、簡単ですが、すみません。
「介護学」と言う、きちんとした分野で何冊も本を読んで、
レポートもかなり書きました。
私も介護の世界にいますが、ここで現場を知り、認知症を知って言えますが。
ただオムツ変えて、ご飯あげるだけじゃできません。
本人の意志を聞いて・・・介護は中途半端じゃ難しいですね。
介護疲れもでます。
そんな家族の支えになるのがプロです。
海外の事情は興味深いです。

Re:Subimamaさん

英国の場合、中途半端に貯金や財産があると介護の費用にあてなくてはならないようです。
最近財産の上限の引き上げがありました。持ち家を売ったりして介護費用を払わなくてはならないケースもあるとか。

『そんな家族の支えになるのがプロです。』
いい言葉です。
でも家族がいないなら仕方ないにしろ、家族がすぐ近くにいても買い物も何もしてくれなかったら。
そんな家族がいるのが英国みたいです。

それにしても猫のプロでしかも介護のプロだなんて、Subimamaさん、深い〜。
頑張りすぎないように、頑張って下さいね。