『ツイン・ピークス The Return』八話まで感想、ネタバレあり

デヴィッド・リンチ監督によるアメリカのテレビシリーズ『ツイン・ピークス The Return』、日本でも放映が始まったようです。
嬉しい、これですぐにいろいろな考察が日本から発信してきますね。
そういう訳で、以下はエピソード8までのネタバレというよりは、勝手に私が感じたことです。























八話のぶっちゃけた感想。
これ、エヴァっぽくなってない?
でした。
(ツイン・ピークス的だとか影響を受けたとか言われたアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズっぽくなるのかな?)


ここまできて、ホントに思ったこと。
『ツイン・ピークス The Return』の日本人の意見が聞きたい。
主にアメリカ人のファンによる解説とか考察とか、とくにエピソード8に関しては調べてみたんだけど。
うーん。
結局、善悪二次元論的なものにいきついてしまうファンが多いみたい。
エピソード8を観たら、日本人なら多分きっと多くの方が違う感じ方をする、と思うのです。
リンチ監督は善悪で割り切れるような単純な人間観や世界観をシュールで不可思議な作品に反映するとは信じたくないのです(←祈ってます、そうならないことを)。


「日本人なら多分きっと多くの方が違う感じ方をする」と思う理由のひとつは、8話で人類初の核実験、1945年7月16日に実施されたトリニティ実験がでてくるのです。
ゴードンのオフィスの壁にかかっていた、マッシュルーム型の爆発の大きな写真が飾ってありましたが、これのことだったのでしょう。
その実験によって『ボブ』が誕生したらしい、というのが分かります(或は既に存在していたボブが『放出』された?)。
『ボブ』は絶対的な悪の象徴として捉えているアメリカ人のファンが(ネットで調べた範囲では)多いのです。
が、オリジナルのツイン・ピークスの中の『ボブ』はローラ・パーマーの父、リーランドに寄生した「快楽殺人犯」であって、サイコパス的な人間の一面を象徴化した存在であったと記憶しています。
政治的や宗教的にその影響力を広げて人類や世界を征服するようなタイプの『悪』ではないと思っていたので、世界のパワーバランスを変え、人類の歴史を変え、虐殺の兵器をして使用された核との因果関係がよく分かりません。
核兵器の存在が『ボブ』に影響しているとしたら、世界征服くらい企んだっていいような気がします。
それとも、『ボブ』そのものが環境によって変化したり、『ボブ』は複数存在するのか、寄生している人間によってその存在理由や性質が変わる、と見た方がいいのでしょうか(次元が違うと違う『ボブ』なのかな)。
(だとしたら、ローラ・パーマーも性質や存在意義が変わる可能性あるかも)


ここまで観て、ツイン・ピークスに対して今現在不安要素が二つあります。
1)もしかして、神話っぽくなるの?
2)もしかして、ループもの?


アメリカのテレビ番組で、しかもあのデヴィッド・リンチが監督していて、一世を風靡してテレビドラマの在り方に大きな影響を及ぼしたツイン・シリーズの続編なので、私の期待値は非常に高いのです。
それなにの、ここまできてツイン・ピークスの世界が、ここ昨今アニメやマンガなどてよく使われる『ループもの』で、しかも一種の『現代の神話作り』的なものだとしたら、かなりがっかりなのです。
核実験で『ボブ』が誕生したので、『ボブ』に対峙するもの/この世を救うもの/その影響力を変えるものとして『ローラ・パーマー』がこの世に送り込まれた。
八話を観ると、そういったシナリオなのかなと思ってしまいます。
『ローラ・パーマー』とは、父親に虐待され、クスリに溺れた可哀想な女子高校生だったかれど、それ以上の何かでは確かにある(映画版では、ローラは『ボブ』からロネット・ポラスキーを奇跡的に助けている)。
ロッジに存在し、クーパーと会話するということは、単なる普通の女子高生ではない(この時点で、クーパーも単なるFBI捜査官ではないと思った方がよさそう。クーパーはホワイトロッジの捜査官、という説を聞いて、頷ける。一話の冒頭部分で巨人から捜査の指示を受けているのかも、ということです)。
では、一体、何者?
救世主?
(ローラ・パーマーよ、神話になれ、って感じ? )


『ループもの』だと感じたのは、八話のこの一連の流れ。
『悪い方のクーパー』(ドッペルゲンガー/ボブ)が撃たれて、アヤシいおっさん達(Woodmen)がその体によってきて、ボブが『悪い方のクーパー』の体内から『排出』(?)され、そして『悪い方のクーパー』再び蘇る。
すると、ロード・ハウスでアメリカのロックバンドのナイン・インチ・ネイルズの演奏が始まる。
このシーンが、一種の宗教的な儀式のようでした。
それまでのロード・ハウスで演奏された、たいして有名でない或は全く無名の、適当にポップで聞きやすい音楽ではなく、はげしくて重い、ナイン・インチ・ネイルズによる『She's Gone Away』という曲で、まるでローラ・パーマーのことを歌っているような歌詞です。
(ボブが離れる/いなくなる/消えるということは、それと対峙するローラもいなくなる、と示唆しているのかな? とも感じるのですが。謎すぎる)

そして、1945年7月の人類初の核実験テストのシーンに入るのです(トリニティ実験)。


そして、この新作が、旧作と全く違う次元や世界の話であるというヒントは、散りばめられています。
まず、ルーシーとアンディーの子供、ウォーリーの誕生日が合わないこと。
マーロン・ブランドと同じ誕生日というから、4月3日に生まれたことになります。
オリジナルのお話は、1989年の二月下旬から一ヶ月余りの出来事を描いたもの。
なのに、当時ルーシーはまだ妊娠初期だったので、時系列が合わない。
去年発売されたThe Secret History of Twin Peaksによると、かなり不思議なことが。
登場人物の年齢が初期設定とは違ったり、出来事が全く異なったり。
例えば、1989年のミス・ツイン・ピークスに選ばれたのは、アニーではなかったということが分かります。
アニーは、都合のいいときに現れて都合よくクーパーと恋におちて都合よくミス・ツイン・ピークスに選出されたことから、ロッジに関連した人物なのか誰かが送り込んだのか、存在そのものが疑われがちです。
でも、オリジナルのテレビシリーズの話と、公式の記録との食い違いは、アニーの存在を隠蔽するだけでは説明がつかず、多くのキャラに多岐にわたっています。
記録の改ざんが誰かの手によってなされたのか、それとも住民達の記憶が改ざんされたか。
単なる夢落ちか。
そうでなかったら、別次元や別世界でのツイン・ピークスの話なのか。


多次元の話である、という仮説。
これは一部のアメリカ人のファンのあいだでも囁かれているみたい。
そして、もし八話の話の流れが過去の出来事をを描いたのではなく、『ボブ』排出のよって次元が1945年まで引き戻されたのだとしたら?
それは、ループものの可能性、大。


そうではないことを祈ります。
ここまでファンやってきて、日本のアニメみたいだったら、ちょっとどころではなく落胆しそうです。
あれだけ独創力のあるシュールなデヴィッド・リンチ監督のことだもの。
誰もが思いもつかないような、斬新なコンセプトで切り込んでくれることを切に願います。


(ちなみに、英語圏で『ループもの』といのは、殆ど普通の人には知られていません。
進撃の巨人とか、アニメやマンガの大ファンなら慣れ親しんでいる概念だと思うんだけど。
英語では『ループもの』はTime loopと表現されるらしいんですけど、英語圏の有名なSF作品や映画でよく使われている手法ではないらしいから。)


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事件続きでゆっくり観られなかった『ツイン・ピークス』

デヴィッド・リンチ監督によるアメリカのテレビシリーズ『ツイン・ピークス The Return』、ようやくやっとじっくり観られるようになりました。
本国アメリカでは5月22日に始まり、毎週日曜日に放映されてついにエピソード8まできました。
ここで、一週間お休みなので、今週と来週は今までのエピソードを振り返ったり前作や映画版、ツインピークスファンの考察や解説からいろいろ学べる良い機会となりそうです。
ただ、18エピソードで終了の予定で中盤まで来ているのに、エピソードが進むほど謎や疑問が増えまり。
ここまできてまだ登場していない主要キャラクターもいる。
というか、18エピソードで気持ちよく終わる筈ないよね。
リンチ監督、広げた風呂敷き、畳む気なんか毛頭ないよね、きっと。
シュールで摩訶不思議な世界を産み出す奇才、リンチ監督だもん。
納得のいかないもやもやするエンディングになって、ネット上での議論は沸騰して、次作待望論が高まるんだろうな。





『ツイン・ピークス The Return』、集中して観られない日々が続きました。
というのも、『ツイン・ピークス The Return』始めってから、英国そのものが『ツイン・ピークス』的な不思議で不気味で恐怖に満ちた、それでいてどこが滑稽なところもあり(メイ首相、笑わせてもらいました、解散総選挙しなければ問題なかったのにねー)、予測不可能で非現実的で残虐な事件が次から次へと短期間で起こったからです。
大規模なイスラム教徒系原理主義者によるテロが二件。
イスラム教徒を狙った白人系英国人によるテロが一件(罪のないイスラム教徒に対する、差別による犯罪は更に増加しているようです)。
総選挙一件。
予想が大きく外れて、与党である保守党が過半数に達せず、不安定要素の多い政府となってしまいました。
そして、北アイルランドの親イングランドで『とっても』保守的(中絶反対等)な政党と組んだので、北アイルランドの他の政党からの不満の声があり、和平協定にも影響するのではという見方もあります(北アイルランドは、もともとアイルランドという国の一部でして、それをイングランドが奪ってしまったので、いろいろ政治的な問題が)。
大規模な公営の高層住宅の火災が一件(この高層住宅の被害者だけではなく、周辺住民も避難しています。更にカムデン区の高層住宅の住民も安全上の理由から避難)。
(この他にも、黒人の青年が警察に逮捕された後不自然に亡くなるという事件が起き、抗議に集まった一般市民が警察隊と衝突する騒動が東ロンドンでありました→Demonstrators confront police in east London over Da Costa death
これだけの事件/事故更に大どんでん返しの総選挙というコメディーがあって、暴動が起きていないって、よく考えると、すごいかも(2011年の大規模な暴動があって以来、英国の社会って脆弱だと思ってます)。


ようやく落ち着いたので、ツイン・ピークス、そろそろじっくりとネタバレ書けそうです。

エピソード8に出演したアメリカの人気ロックバンド、ナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)。
ツイン・ピークスという人口たかだか5万人の街の飲み屋兼ライブハウスで演奏するには、成功し過ぎているバンドなのでそれだけでシュール過ぎてウケました。
ちなみにThe Nine Inch Nailsと、紹介されています。



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あの大人気テレビシリーズ『ツイン・ピ―クス』が戻ってきた〜!

ツイン・ピークスが、26年ぶりに始まりました。

ツイン・ピークスは、映画監督のデヴィッド・リンチと作家/脚本家であるマーク・フロストが総指揮をとって1990年〜1991年にかけてアメリカにて放映されたテレビドラマ番組で、1992年にはその前日譚映画『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』が公開されました。
デヴィッド・リンチ監督の不可思議でミステリアスな世界観が炸裂したその作品は、女子高校生の殺人事件というありきたりの話をオリジナルな作品に仕上げ、カルト的な人気を博しました。
エヴァンゲリオンとか、進撃の巨人とか、考察ものが好きで見終わった後もずっとモヤモヤした気持ちで楽しめる方には、絶対オススメです。


それから、無駄なエピソードが多いというか、変わったキャラがよく出てくるというか。
それでもちゃんとミステリー/サスペンスものとしても成立。
若かりし日、ツイン・ピークスの訳の分からない世界に、すっかりハマってしまいました。


脇役のキャラで特に好きだったのは、この二人。
リンチ監督自ら、FBIの捜査主任を演じています。
これが何故か補聴器をしていても難聴に悩み、常に大声で喋り周囲を辟易させる役。
そして、おとり捜査のため女装してからすっかり女装が自然になった捜査官(後にテレビドラマシリーズ『Xーファイル』で主役を演じたデイヴィッド・ドゥカヴニーが好演)。
その女装が完璧で色っぽくて、感動さえ覚えます。



最新のエピソード1&2、早速観ました。
想像を越えて、はるかにホラーの要素が濃いです。
そして、リンチ監督のシュールでミステリアスな世界は、更に更にその不可思議さを増していました。
ツイン・ピークスというと、主人公であるクーパーFBI捜査官のドーナッツとかチェリーパイを用意してブラックコーヒーと共に食べながら観るのが『王道の見方』でしたが、1&2ではコーヒーだけで充分です。
ネタバレ、行きます。
















・丸太おばさん(ログ・レディ)、丸太のメッセージを伝える。
好演した女優のキャサリンさん、2015年に亡くなっているの。直前に撮影したのかな。なんだか泣けます。ありがとう、感動を与えてくれて。

・クーパーのドッペルゲンガーが、『現世』のほうで存在している。
本物のクーパーは、ブラックロッジに閉じ込められたまま。

・相変わらず、デヴィッド・リンチらしさがよく出ていました。
チワワを抱えた太った女性が、隣の部屋から異臭がすると警察に届けるのですが、その部屋の鍵を求めてのエピソードが、全く無意味で冗長で会話が破綻したりしていて、ウケる。すごい。

・なんだかいろいろ殺人が起きる。
残酷なシーンもある。

・クーパーのドッペルゲンガー『悪い方のクーパー』が、嫌すぎる。

・アンディーとルーシーの子供は、男の子でした。

・精神科医のジャコビーは、やっぱりアヤシいまま。

・ローラ・パーマーのお母さんは、やっぱりヘビースモーカー。

・ベンジャミン・ホーンは、マトモになったのかな?
弟のジェリーは、相変わらずうざいヤツだけど。

・ジェイムズと一緒にいた男の子は、誰でしょう?
ジェイムズの息子?
緑の手袋は、何とため?
ジェイムスがバイクで事故にあったらしいけど、どういった事故だったのか、誰か同乗していたのか。

・シェリーには、娘さんがいるみたい。

・ロードハウスのバンドが、いまいち。
オリジナルより、ずっとずっと話が暗く重くミステリアスすぎるので、これくらい軽いポップのほうがいいのかも。

・オードリーは、まだ。



ついでに、エピソード3&4も。
・ちょっと笑えるシーンが増えてくる。

・精神科医のジャコビーは、やっぱり凄くアヤシい。

・『悪い方のクーパー』、吐く。
(何を吐いたんだっ?)

・オリジナルの『善い方』のクーパー、現世に出現。
Dougie Jonesという人と入れ替わる。
Dougieは『製造』された、って、誰/何が、なんのために?
『悪い方のクーパー』が吐いた時に、Dougieも吐いていた。
こんなに嘔吐シーンの多い作品は、『明日のジョー』以来かも。

・『善い方のクーパー』、朝食の席でコーヒー吐き出す。

・殺人はなく、残虐シーンも減り、ホラーもゆるくなる。
エピソード1&2が、ジェットコースターの最初の大きな急な坂といった感じ。
エピソード1&2で緊張しまくったせいか、3&4が物足りなく感じたほど。

・ゴードンの補聴器が改善されていて、ほぼ普通に会話ができる。
つまらん。

・FBIのアルバート、出演。
俳優さんのミゲルさん、今年の一月に他界。ありがとう。

・エピソード最後のスタッフロール、毎回違うバンドが演奏するみたい。
なんだか、もう、飽きた〜 
それなら、ジュリー・クルーズでいいよ〜

・ボビーは、保安官〜

・ツイン・ピークス保安官事務所の平均年齢が、ちょっと高過ぎないかと、心配。

・4エピソードたっても、まだまだ出演していないキャラが。

・ドーナツを食べながらの視聴は、やっぱりまだ無理かな。

・新出演リストを見て、ナオミ・ワッツはクーパーの妻役だとずっと信じきっていましたが、正確にはDougie Jonesの妻でした。
(ローラ・ダーンが妻って、ちょっとリアリティーが無い〜)

・オードリーは、まだ。



ざっくりと、こんな感じです。
ブラックロッジのシーンとか、『不可思議』な現象やシーンは説明不可能或は説明するがの面倒すぎるので、ほぼ省きました。



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ディヴィッド・ボウイがイタリア語で歌ってる。それだけでただただ感動

いや〜、やられてしまいました。
マーティン・スコセッシ監督といい、巨匠レベルの映画監督はやはりすごい、衰え知らずです。
それほど期待して鑑賞しなかったイタリアのベルナルド・ベルトルッチ監督による『孤独な天使たち』(2012年、イタリア語題 Io e te、英語題 Me and You)に、泣いてしまいました。



音楽が的を得た使い方をしていて、その点にとても感銘を受けました。
ポップ音楽とかロック系のものを数曲以上使う映画って、けっこう曲を使い過ぎて失敗してるなと感じることがあるのですが、『孤独な天使たち』ではドンピシャリです。


去年亡くなった音楽界のレジェンド、ディヴィッド・ボウイさんの名曲『スペイス・オディティ』(Space Oddity)が使われています。
映画の後半の重要な場面で、そのイタリア語版が。
『スペイス・オディティ』のイタリア語ヴァージョンが存在するなんて全く知りませんでした。
しかも、歌詞が全く違うのです。
イタリア語題はRagazzo Solo, Ragazza Sola、英語題では Lonely Boy, Lonely Girl。
タイトルが示すように、オリジナルのような宇宙飛行士の話ではなく、とても悲しい愛の歌。
主人公の気持ちや状況を、よく暗示してくれていて、泣けるのです。



エンディングからスタッフロールで、オリジナルの英語版が使われています。
こちらの使い方も、適確すぎる。
北斗神拳みたいに、秘孔ついてくる。
ここでまた、涙。



英語圏では『孤独な天使たち』はそれほど高い評価を受けていないようです。
英国のアート/文化面では一番力を入れている新聞The Guardianでは3/5という辛い評価で、よくお世話になっているRotten Tomatoes(ロッテン・トマト、映画評論家による映画レビューを一か所にまとめたウェブサイト)ではたったの68パーセント。
そうなのか〜。
批評家って、すごいな〜。
中年のオバサンが、色々こじらしてる鬱気味な14歳の少年が主人公のの成長物語に感動して、何が悪い?


同じく色々こじらしている鬱気味の十代の少年が主人公の、同じデイヴィッド・ボウイの曲("Heroes")をテーマに使った、しかも同じ年、2012年に公開されたアメリカ映画『ウォールフラワー』(The Perks of Being a Wallflower)のほうが高く評価されているのに、私はどういう訳かハマれませんでした。
私にとっての決定打は、音楽にあるんです。
音楽の使い方が『ウォールフラワー』は雑なんですよ、音楽ファンから言わせると。
ということで、リア充になれない思春期まっただなかの主人公とボウイさん括りで、サウンドトラックの観点から近々この二作品の比較したいです。



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ディヴィッド・ボウイ一周忌に、映画『地球に落ちてきた男』を鑑賞

デイヴィッド・ボウイが星に帰って、はや一年。
それを祝うように、ボウイ主演の映画『地球に落ちて来た男』(1976)を初めて観ました。
私の人生において、初ボウイ体験は80年代でした。
異邦人というか宇宙人的というかアンドロギュヌスというか華やかな時代は終わっていて、おっさんになりきれないアヤシい存在として私の目には映りました。
それで、ボウイが一番輝いていた時代の映画にエイリアンを演じたというわけですから、それは楽しみ楽しみ。
だったんだけど、あれ?


ウィキ掲載のあらすじは以下の通り。
『ある日、宇宙船がアメリカ・ニューメキシコの砂漠地帯に落下する。
しばらくして後、トーマス(トミー)という非常に美しい容姿を持った1人の男が弁護士のもとを訪れ、人知を超えた9つの特許を元に巨大企業を作り上げる。
実は彼は落下した宇宙船に乗っていた宇宙人で、地球にやってきたのは、不毛の地となりつつある母星を救うという目的のためだった。しかし、そのビジネスの成功はやがて思わぬ結果を招く…。』


ハダカのシーンが多過ぎて、それが無意味過ぎて、単に観客に媚うってるだけじゃないのと面倒くさくなって、想像していたより世俗的過ぎて、なーんだボウイさんが出演しているだけの単なるB級映画じゃないのかと思ったら。
違った。


この先、ネタバレいきます。













勿論、ボウイ演じる、イギリス英語を喋る科学者トミーの言うことを信じて、旱魃で苦しむ故郷の星に残した妻と子供達のために地球にやってきて、水を持ち帰り故郷を救うという高潔なプランを持ったエイリアンが、地球人の女性と不倫関係に陥ってそれを金で解決しようとしたり、人体実験されたりして、酒に溺れていくという身もふたもないストーリーとして観ることもできます。

しかし、それにしては、いろいろ疑問が。
結局、これは英国から来た天才科学者の妄想なのではないか、という捉え方もできます。
英国のパスポート持っているし(最初のシーンで、質屋で見せている)、エイリアンであるという徹底的な物証はなく、地球に着地して破損して使えないなるよう宇宙船で他の惑星に行って旱魃の故郷を救うという考え方が、意味不明。
実はトミーの『不倫』相手、メリールーとの痴話げんかが『真実』を暗示しているのでは。
メリールーは、トミーに惚れ込んでいるので彼の言うことを一応は信じている、でも、たまに彼にとっては痛いところをついてきます。
彼の英国のパスポートが期限切れとか、故郷から何光年かかるのとか、『エイリアン』と罵ったり。
英語のalianは、宇宙人とだけでなく、外国人という意味もありますから。
メリールーは、トミーが宇宙人だという話を信じているフリをして、内心は彼が心の病気をもっていることを察していたのかも知れません。

物語の後半で、トミーはヘンな場所に監禁されます。
そして、人体実験されるのですが、ある日、唐突にトミーはドアが開いていることに気がついて、逃げ出します。
そこで観客が知るのは、この監禁場所は普通のホテルであったこと。
地下施設でも、人里離れた研究所でもなく、『オールドボーイ』のように窓のない閉鎖された空間に閉じ込められたのではなく、いつでも自由に移動ができる場所だったということ。
そういえば、ボーイの姿が映っていたし、メリールーは何の障害もなく楽々とトミーに会いにきたし、そのとき「ルームサービス」という単語が彼の口から出たし、彼のいる場所はホテルとは思えない幾つかのまったく違ったコンセプトの部屋の一番奥にあり、外界と結ばれているであろうドアのあるところは舞台かテレビのセットの裏側のような作り。
つまり、監禁されていたのではなく、トミーは本人の意思で(敵対するカンパニーから身を隠して)、或は鬱かなにかの心の病で(プロジェクトが邪魔されて失敗に終わったから)、ホテルに閉じこもっていただけで、人体実験も妄想であり、医者や看護婦は彼の往診にきただけではないのでしょうか。
つまり、映画の殆どのシーンは、トミーの妄想の映像化ではなかったのかということ。
しかし、最後のほうでは、他の地球人の登場人物は年をとっていくのに、トミーだけは全く変わらないのです。
それは、トミーが宇宙人だから加齢の速度が違うのではなく、彼の妄想の世界では、彼だけが老化しないのかも知れません。


では、何故ここまでトミーはここまで詳細な『妄想』をもつようになったのか。
勿論、総合失調症を抱えた天才科学者、という見方もできます。
でも、私はトミーはアルコール中毒で、それを克服する物語だったのではないかと思いました。
映画の最初から最後まで、執拗に登場するのは、無色で透明な液体。
最初の頃は、トミーは水を飲んでいます。
私の観た限り、最低2回、その水に何か白い粉を入れています。
これは、アルコールを絶つための何かしらのお薬だったのではないでしょうか。
トミーには、母星ではなく、母国である英国に妻も子供もいて、アルコール中毒のために家庭を壊してしまい、アメリカで科学者として一からやり直そうとして、新しいアイデンティティーの創造のために築き上げたのが『故郷を守るために地球にやってきた家族思いの科学者』。
最初のシーンで妻の指輪を質屋に売るというのは、過去と訣別する儀式だったとも思えます。
母星で起こったという旱魃は、アルコールを断っているためにおこるアルコールへの渇きのメタファーではないでしょうか。
中盤からはトミーが水を飲むシーンはなくなります。
それでも、飲んでいるのは多くが無色で透明の液体。
特に好んで飲んでいるのは、ジン。
ビーフィーターという英国の会社のジンが特にお気に入りのようでした。
ジンは、無色透明なスピリッツですから、端から見ると水のようにも見えるのです。


勿論、トミーが天才科学者であるということも妄想だという見方もできますが、ここだけは信じます。
だって、デイヴィッド・ボウイが最後に出演した映画は2006年の『プレステージ』で、演じたのはオーストリア帝国出身の謎めいた天才科学者のニコラ・テスラだったから。
ボウイの最初の映画も最後の映画も、外国から来た天才科学者の役。
なんだか、いいじゃない。


ボウイ演じるトミーは宇宙人で不運が続いて故郷に帰れなかった、というストーリーの映画として観ても、ボウイさんの細くて青白くて華奢な裸体をただただ拝む映画としても、それなりに楽しめると思います。
ただ、私個人としては、アル中治療中の英国人がアメリカで堕ちていく映画として捉えたとき、B級映画的な表現に納得し一番面白いと感じました。



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